札幌の北大北キャンパスに4施設が集中し、動物実験施設を棟内に持つラボまで借りられる。函館には海水を引ける水産・海洋の拠点があり、研究室は㎡658円。本州の賃貸ラボでは満たせない条件と、公開賃料の全体像を整理します。
北海道のラボは、札幌の北大北キャンパスに集中している
北海道でラボを借りるとき、選択肢は事実上2種類に分かれます。札幌市北区の北海道大学北キャンパスに集まる4施設か、目的が明確に絞られた地方の3施設かです。
北キャンパスは北大リサーチ&ビジネスパークと呼ばれるゾーンで、大学のオープンラボラトリー、食と医療の融合拠点であるFMI国際拠点、中小機構が運営する北大ビジネス・スプリング、産学官協働のコラボほっかいどうが徒歩圏に並んでいます。運営主体が4つとも違うので、入居条件も賃料もばらばらです。ここを理解するのがこの地域のラボ探しの中心になります。
地方の3施設は、函館(水産・海洋)、室蘭(室蘭工大の連携企業)、札幌市厚別区(食・バイオとIT)。それぞれ入居できる相手がはっきり決まっているぶん、条件が合えば非常に安く借りられます。
北キャンパス①:外部企業がそのまま借りられる2施設
4施設のうち、大学との研究契約がなくても入居を検討できるのがこの2つです。まずここから当たるのが現実的です。
北大ビジネス・スプリング(中小機構)
独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営するインキュベーション施設で、2008年11月竣工。ウェットラボが31室あり、25.27㎡のタイプ1が18室、52.83㎡のタイプ2が13室という構成です。賃料は月額91,740円(25.27㎡)から191,840円(52.83㎡)で、㎡単価は約3,630円。
この施設で見落とせないのが北海道と札幌市の賃料補助です。公表されている例では、ウェット形態・賃貸1〜3年目の52.61㎡が月額128,670円。㎡単価に直すと2,446円で、補助のない状態から約33%下がります。立ち上げ期の固定費としてはかなり軽くなるので、対象になるかを最初に確認してください。
設備は階高4.0m・天井高3.0m、床荷重は1階800kg/㎡・2〜3階500kg/㎡。電源はタイプ1が単相最大10.000kVA+三相最大17.300kVA、タイプ2が単相20.000kVA。足りない場合は事前協議のうえキュービクルの予備電源(単相100A×6回路・三相150A×4回路)が使えます。合成実験にも対応します。会議室・商談室は無料で使えます。
コラボほっかいどう(NOASTEC)
公益財団法人北海道科学技術総合振興センターが2000年から運営する共同研究施設です。Aルームから Iルーム と事業化スペースIIの9区画があり、23.7㎡から103.5㎡。賃料は月額61,359円から267,961円で、㎡単価は約2,589円。北キャンパスの4施設のなかで最も安い水準です。
契約は賃貸借ではなく「共同研究施設の利用」という形式で、施設使用許可にあたります。申請には共同研究施設利用申請書に加えて、共同研究の内容を説明する書類、企業概要、登記簿謄本、決算報告書2期分の提出が必要です。共同研究の中身を書面で説明できる状態にしてから動いてください。
北キャンパス②:大学との契約が前提の2施設
残る2施設は、北海道大学と共同研究または受託研究の関係があることが入口条件です。単独で借りることはできません。
北海道大学 オープンラボラトリー
総合イノベーション創発機構が運営し、1室21〜123㎡。賃料は棟によって分かれ、創成科学研究棟と北キャンパス総合研究棟2号館・3号館・7号館が月3,000円/㎡、6号館が3,500円/㎡、8号館が3,900円/㎡(いずれも光熱水料別)。
利用できるのは、北大と共同研究または受託研究を行っている企業等です。しかも利用代表者は北大の教職員であることが求められ、研究代表者も本学教員である必要があります。つまり企業側が単独で申し込む施設ではなく、共同研究の相手方の教員と組んで申請するものだと理解してください。利用期間は原則1年で、通算5年まで更新できます。8号館には別の審査基準があります。
部屋によってはドラフトや中央実験台が備え付けられており、学内LANにも接続できます(入居者負担で工事が必要な場合があります)。食堂・売店・ミーティングルームが同じ敷地内にあります。
北海道大学 フード&メディカルイノベーション国際拠点(FMI国際拠点)
食と医療の融合をテーマにした産学連携拠点です。実験室(防水床)が25〜103㎡、研究室(カーペット敷き)が25〜55㎡、1デスク単位(約6㎡)の利用もあります。賃料は一般施設が月3,900円/㎡、動物実験施設が5,200円/㎡。1デスクは年度292,500円で、月あたり約24,375円です。
入居できるのは北大の教職員に準ずる者、企業関係者、自治体関係者で、利用目的に産学連携の共同研究や人材育成などが含まれることが条件になります。利用期間は原則5年以内で、延長申請により延ばせます。
共用部が充実していて、多目的ホール481㎡、フューチャールーム122㎡、ディスカッションプラザ102㎡、オープンカフェ186㎡、セミナールーム110㎡などがあります。北海道大学オープンファシリティを通じて各種分析機器を利用でき、研究区域はオートロックでゾーニングされています。
動物実験ができる——本州の賃貸ラボにはほぼない条件
北海道のラボで最も特徴的なのは、動物実験施設を同じ敷地・同じ棟の中に確保できることです。
北大オープンラボラトリーの北キャンパス総合研究棟6号館には、生物機能分子研究開発プラットフォーム推進センターの動物実験施設があります。同じ棟の中で動物実験と居室・実験室を並べて確保できるため、動線を分断せずに前臨床の作業を進められます。FMI国際拠点にも動物実験施設があり、月5,200円/㎡という賃料が公表されています。
賃貸ラボで動物実験ができる施設は全国的に見ても限られています。たとえば福岡のエフラボ九大病院は明確に動物実験を不可としており、多くの民間賃貸ラボも同様です。前臨床で動物を使う計画があるなら、この一点だけで北キャンパスを候補に入れる価値があります。
ただしどちらも北大との共同研究・受託研究が前提です。動物実験施設だけを借りるという使い方はできません。大学の研究者と組む座組みを先に作ってから相談してください。
函館:海水を引ける水産・海洋の拠点
函館市国際水産・海洋総合研究センターは、函館市が設置し一般財団法人函館国際水産・海洋都市推進機構が指定管理者として運営する施設です。研究室は25㎡・37㎡・50㎡・75㎡・115㎡の5タイプ。
賃料が際立って安く、25㎡が月16,460円、115㎡でも月75,720円です。㎡単価は658円で、全国のレンタルラボと比べても最下位クラスの水準です。光熱水費は自己負担になります。
この施設の本体価値は共用設備にあります。海水供給施設があり、使用水量1m³あたり180円(別途電気料金)で海水を引けます。大型実験水槽は1日7,860円、それ以外の共用実験施設は1㎡あたり月550円、海洋調査関連施設は1m³あたり月420円。実習室が1時間700円、大会議室が1時間800円と、必要なときだけ払う構成になっています。
研究室と入居者が使う施設は、メンテナンス等による臨時休止を除いていつでも使えます。対象は水産・海洋に関する調査・試験・研究開発または教育を行う者で、使用料は前納です。海洋バイオや水産系の開発なら、この設備を月数万円で使えることの意味は大きいはずです。
室蘭・厚別:入居できる相手が絞られた2施設
残る2つは条件が明確なぶん、当てはまるなら有力な選択肢になります。
室蘭工業大学 アライアンスラボ
T棟2〜3階に全7室、20〜68㎡。利用料は年額14,200円/㎡で、月に直すと約1,183円/㎡。別途、光熱水料の実費相当額がかかります。北大の施設の3分の1以下という水準です。
ただし入居できるのは、室蘭工大発ベンチャーの称号を持つ企業、称号の事前審査を通過した者、包括連携協定に基づく共同研究契約企業、共同研究契約企業のうち学長が認めた企業のいずれかに限られます。契約は資産使用許可という形式で、民間等は年度ごとに申請します。期間は称号企業が授与日から5年、共同研究契約企業は契約書に定める研究期間です。
札幌市エレクトロニクスセンター 技術開発室B
一般財団法人さっぽろ産業振興財団が運営する、厚別区のテクノパークにある施設です。2階の技術開発室Bが全11室で、オフィス内の一部がウェットラボ仕様(P2レベル)になっています。
賃料は月2,450円/㎡(共益費・消費税込)で、入居補償金が賃料の2ヶ月分。ここは注意が必要で、スケルトン渡しのため初期設備工事は入居者負担です。電気代・上下水道代・ガス代・産業廃棄物処分費も別途かかります。
入居条件は、食・バイオ関連の研究開発を行うこと、またはウェットラボ仕様(P2レベル)の機能を損なわない形でIT関連の研究開発を行うことです。P2の設備を残すことが条件になっている点が独特で、既存の設備を活かす前提の施設だと考えてください。
賃料の全体像
掲載データの公開賃料から㎡単価を出すと、次のようになります。北海道は公設・大学系が中心のため、比較できる数字が揃っている地域です。
| 施設 | ㎡単価(月) | 坪換算 | 条件 |
|---|---|---|---|
| 函館市国際水産・海洋総合研究センター | 658円 | 約2,180円 | 水産・海洋の調査/研究/教育に限る |
| 室蘭工業大学 アライアンスラボ | 約1,183円 | 約3,910円 | 室工大発ベンチャーまたは共同研究契約企業 |
| 北大ビジネス・スプリング(賃料補助適用例) | 約2,446円 | 約8,090円 | ウェット形態・賃貸1〜3年目の公表例 |
| 札幌市エレクトロニクスセンター 技術開発室B | 2,450円 | 約8,100円 | 食・バイオ/P2を残すIT。共益費税込・スケルトン渡し |
| コラボほっかいどう | 約2,589円 | 約8,560円 | 共同研究の内容説明が必要 |
| 北大 オープンラボラトリー(2/3/7号館・創成棟) | 3,000円 | 約9,920円 | 北大との共同研究/受託研究が前提・光熱水料別 |
| 北大 オープンラボラトリー 6号館 | 3,500円 | 約11,570円 | 動物実験施設が同じ棟にある |
| 北大ビジネス・スプリング(補助なし) | 約3,630円 | 約12,000円 | 25.27㎡で月91,740円 |
| 北大 FMI国際拠点(一般施設) | 3,900円 | 約12,890円 | 光熱水料等実費別 |
| 北大 FMI国際拠点(動物実験施設) | 5,200円 | 約17,190円 | 同上 |
北大ビジネス・スプリングは北海道・札幌市の賃料補助の対象です。補助が効くと㎡3,630円が2,446円まで下がる例が公表されており、約33%の差になります。適用条件は施設に確認してください。
目的から選ぶ
北海道は「誰が借りられるか」で選択肢が決まる地域です。賃料の安い施設ほど条件が絞られています。
| 条件・目的 | 候補 | 理由 |
|---|---|---|
| 大学との契約なしで借りたい | 北大ビジネス・スプリング/コラボほっかいどう | この2施設のみ外部企業が直接入居を検討できる |
| 立ち上げ期の固定費を抑えたい | 北大ビジネス・スプリング(賃料補助) | 補助適用で㎡2,446円の公表例がある |
| 動物実験が必要 | 北大 オープンラボ6号館/FMI国際拠点 | 棟内に動物実験施設。ただし北大との研究契約が前提 |
| 海水・大型水槽を使いたい | 函館市国際水産・海洋総合研究センター | 海水供給1m³=180円、大型実験水槽1日7,860円 |
| 食×医療の産学連携 | FMI国際拠点 | 北大オープンファシリティの機器を使える |
| 室蘭工大と組んでいる | 室蘭工業大学 アライアンスラボ | 年14,200円/㎡。称号企業か共同研究契約企業が対象 |
| 食・バイオでP2設備を活かす | 札幌市エレクトロニクスセンター 技術開発室B | 月2,450円/㎡。ただしスケルトン渡し |
先に決めるべきは座組み
北海道で安く借りられる施設は、ほぼ例外なく「大学との関係」か「分野の限定」が条件になっています。物件を先に探すより、どの大学のどの研究者と組むか、どの分野で申請するかを固めるほうが早く進みます。
逆に、まだ座組みが決まっていない段階なら、外部企業が直接入居できる北大ビジネス・スプリングかコラボほっかいどうの2択です。どちらも北キャンパス内なので、入居してから大学との関係を作っていく順番も取れます。
よくある質問
北海道で大学と組まずに借りられる施設はありますか?
北大ビジネス・スプリング(中小機構)とコラボほっかいどう(NOASTEC)の2つです。コラボほっかいどうは申請時に共同研究の内容を説明する書類が要るため、実質的に最も入りやすいのは北大ビジネス・スプリングです。
動物実験ができる賃貸ラボは本当にありますか?
北大オープンラボラトリーの北キャンパス総合研究棟6号館に動物実験施設があり、同じ棟内で居室・実験室と並べて確保できます。FMI国際拠点にも動物実験施設があり月5,200円/㎡です。ただしどちらも北大との共同研究・受託研究が前提で、研究代表者は北大教員である必要があります。
函館の㎡658円は本当ですか?
函館市国際水産・海洋総合研究センターの研究室で、25㎡が月16,460円、115㎡が月75,720円という公表賃料から算出した数字です。光熱水費は別途自己負担で、対象は水産・海洋に関する調査・試験・研究開発または教育を行う方に限られます。
賃料補助はどれくらい効きますか?
北大ビジネス・スプリングでは、北海道・札幌市の賃料補助が適用されたウェット形態・賃貸1〜3年目の例として52.61㎡で月128,670円が公表されています。補助のない㎡3,630円に対して2,446円となり、約33%の差です。適用条件は施設への確認が必要です。
札幌市エレクトロニクスセンターは初期費用がかかりますか?
スケルトン渡しのため、初期設備工事は入居者負担です。入居補償金も賃料の2ヶ月分かかります。月額2,450円/㎡という賃料の安さだけで判断せず、内装と設備の工事費を見積もってから比較してください。